【その4】ストップの奥義?
ストップのことを前回で少しお話しました。
見逃した方はこちらからどうぞ。
私Mitscoは、オルガンを弾いたりしますが、未だにこの「ストップ」の深さを理解していません。
夫(オルガンビルダー)に何度も何度も、聞きますが、理解できません(爆)
夫いわく、「自分でさえ、理解するのに5年かかったのだから、Mitscoに理解できるのは何年かかるのか、分からない…」
はい、そうですね。
しかも、夫婦間でお互いを理解するのに苦しむことがあるというのに。
さて、この記事、どうやって皆さんが「ストップ」の奥義??に理解できるように、導けるのか…。
まずは、歴史からひも解いてみます。
ルネッサンス時代のオルガン
ルネッサンス時代とは、15~16世紀ころと言われています。
ドデカ鍵盤から、だんだんと小さくなり、現代の形の鍵盤になっていきました。
音域も、3オクターブくらいまで、発展していったそうです。
音域は、コーラスと同じ必要がありましたので、発声技法から考えると、この程度(3オクターブ)くらいで、用が足りたということです。
そして、ストップ装置が出現します。
これは、前回の記事にも書きましたが、音色や音質を選択できるスイッチなのです。
ストップの始まりは、これ
倍音関係に並列されているパイプ郡から基音とその八度上の音を出すパイプをスライド板を用いて分離し、伴奏や独奏に使う工夫をしました。
パイプオルガン~歴史とメカニズム 秋元道雄著
これ、意味わかります??
かなり専門的ですよね。
一つの基本となる音から、オクターブ上の音を、板を入れたりして音を変えていったのです。
リコーダーで笛をふく時も、後ろの親指を全部閉じるときは、低い音、親指を半分にするときは、高い音がでますよね。そんなイメージで良いと思うのです。
パイプ一つ一つが、大きいので、親指一つで音を変える所を、板を使って音を高くしたりして、工夫をしたんだと思います。
ストップの発展
15世紀ころは、ストップは大ざっぱに作られていました。
当時の「大オルガン」とよばれるパイプ列は、複雑だったようで、各音のパイプの数や倍音の取り方が一定していなかったので、細かいストップの分類は不可能であったようです。
16世紀ころになると、ストップの歴史が刻まれていきます。
基本のプリンシパル(前回の記事を参照してください)の他に、8度や15度、22度などオクターブや、倍音ストップも現れます。
さらに、パイプを太くして、フルートの音色に近づけた、フルートストップ。
閉管のストップが考案され、弦の音色のストップまで開発されました。
そして、低音を演奏できる大型のパイプも製作され、オルガンの主部分と分離された特別なケースに納められるようになりました。
鍵盤の音域も広がって、低音専用の鍵盤や、足で演奏する足鍵盤も考案されました。
同じストップを、高音用と低音用に分離使用できるものも、見られたようです。
イタリアの一段手鍵盤(マニュアル)のオルガン
手で弾く鍵盤を、マニュアルと言います。車のマニュアルと同じ意味を成すと思います。
手でその大きな機械を動かす意味があります。
ルネッサンス時代で最も大きな影響を与えたのは、イタリアの手鍵盤(マニュアル)のオルガンです。
これは、鍵盤が一つで、ストップが高音の倍音まで、完全に分離されているものです。高い倍音ストップ数個使用することで、リピエノ(イタリア語でミクチュアの意味)を構成できるそうです。
これは、コーラスで一緒に歌えるオルガンです。
この時代の作曲家
- カヴァツォーニ
- アンドレア・ガブリエリ、甥のジョバンニ・ガブリエリ
- メルロ
- ヴァレンテ
- ディルータ
- フレスコバルディ
これら作曲家の作品は、一段マニュアルのオルガンのために書かれたそうです。
北欧の二段手鍵盤のオルガン
もう一つ、ルネッサンス時代のオルガンの紹介です。
北欧でよく使われた、二段手鍵盤のオルガンです。
「大オルガン」と「ポジティフ」の二台のオルガンを使用して、一緒に演奏をしていたようです。
この2台のオルガンを一人で演奏できるように工夫していきました。
「大オルガン」の前に置かれた「ポジティフ」は、「大オルガン」の演奏代に組み込まれた「ポジティフ鍵盤」によって、演奏できるのです。
これは会衆の座る席から聞くと、ステージの手前に設置された「ポジティフ」は、奥にある反響を持った「大オルガン」とは、全く違った音になるそうです。
このようなオルガンを、「フランドール型」、「ベルギー型」と言ったそうです。
イギリスでは
このダブルオルガン「大オルガン」&「ポジティフ」を、「グレイトオルガン」と「ポジティフ」=「チェアオルガン」と2鍵盤を備えていました。
なぜ、チェアオルガンをポジティフと言うかと言うと、合唱の伴奏に多く利用されたので「コワイアオルガン」と言われ、それが「なまって発音されるように」なり、ついには「チェアオルガン」になったそうです。
ま、「おじさん」の発音をいっぱい言うと、「オッサン」になるのと、同じですね(爆)
ネーデルランド(オランダ)では
「大オルガン」は、ブロックヴェルク(一番大きな正面に見えるパイプ郡)ままで、ストップがなかったようです。
「ポジティフ」部分に、ストップを入れて、音色の変化ができるようにしていました。
後になると、「大オルガン」もストップを入れて、どうせなら、とても大きいミクスチュアのストップを入れて、ブロックヴェルクの形が、とんでもなく大きかったのが特徴です。
ドイツでは
「大オルガン」、「グロスヴェルク」と呼ばれる部分(正面から見た真ん中で大きな部分)を、「ハウプトヴェルク」と名付けられました。
直訳すると「頭の仕事」です。
「ポジティフ」がドイツではさまざまな形に変化し発展していきました。
「ポジティフ」は、南ドイツで発展し、「ブルストポジティフ」または、「ブルストヴェルク」、直訳すると「胸の仕事」です。
オルガンが身体全体の意味で使われるのが分かります。「頭」と「胸」があるのですから、あとは何が必要になるでしょう?足はペダルです。
そう。心臓部分は、鍵盤全体のコンソール部分になります。
そうやって考えていくと、聖書にも書かれている「教会はキリストの体である」ことが、オルガンにも表れていると思うのです。(個人的な憶測ですが)
さて、ポジティフに話は戻ります。もともとは「大オルガン」にあった小型のリードパイプのレガールを、特に音を目立たせるために下部に分離して、独立させたのが始まりです。
のちに、ポジティフの性質を持ったストップを増設していったそうです。
一番の特徴は、「独奏用の鍵盤」が目的であったために、他の部分にくらべて、小型に作られていたようです。
写真からも、どれが頭で、どれが胸で、どれが心臓部なのか、分かりますね。
しかも、伴奏用でなく、一人で演奏して一人で解決できちゃう楽器が、人の形のように造られているのです。
しかも、ドイツ語だと、Die Orgelと言われますが、これ「女性名詞」なんですよ。
まったく巨大でその存在は、圧倒的にすごいのに、女性のように繊細に作られていて、気分屋で、たまに音がならなくなったりするのが、たまにきず。
二段マニュアルを使ったルネッサンスのオルガン曲
チェンバロの作品と共通して、作曲されていました。
また、民族音楽的なダンスのリズムを、オルガンに演奏させることもあったようです。
オランダの中心的な作曲家たち
- デュファイ
- ブルーメル
- オブレヒト
- イザーク
- デ・プレ
- ラッソ
- コルネ
- スヴェーリンク
ドイツの作曲家
- シュリック
- ホーフハイマー
まとめ
ルネッサンスといえど、オルガンの発展には欠かせない大聖堂と音楽家、そしてオルガンビルダーによる、大きなオルガンへの情熱ゆえに、ここまで形や音が変わっていきました。
しかも、民族音楽とともに、その土地で生きる人々の知恵が盛り込まれているのです。
だから、オルガンを弾くとなると、その土地へ出向き、人々や文化に触れてみないと、分かれない部分もあります。
またドイツ語でいうオルガンの形が、頭から始まって、胸、心臓、足までもが表現されていることには、大きな発見ですね。
ドイツ語は、その語源から深い意味がありますが、その柱となる「聖書」の言葉が、この歴史とともに、生きているのかなと感じます。
ドイツ人夫と日本人妻は、その言葉の壁によって、ぶつかることが多々ありますが、後々その言葉を悟ったときに、「あ~自分が無知だった」と思うこと多々あります。
だから、ぶつかり合うことも、理解を深めることの一つとして、このオルガン記事を終わります。
最後まで、お読みくださりありがとうございました。
次回もお楽しみに。