パイプオルガンって何?【その1】
今日から、ちょっとずつですが、パイプオルガンについて書いていこうと思います。
教会やコンサートホールにある、でっかい楽器。
そんなイメージしかない、私たち日本人にとって、パイプオルガンが人々に影響する力は大きいと感じているのですが、まったく情報がない!イメージがわかない。忘れ去られている!
パイプオルガンは、外国では、オルガンと言いますが、日本人にとってオルガンは、昔、学校の音楽室にあったような、足踏みオルガンしか想像できません。
だから、ここで大オルガンについて、あれこれと書いていこうと思うのです。
1. パイプオルガンって、何?
歴史が深く、とても古い楽器です。
楽器なのですが、人が、神様に向かって「賛美」をささげる時に、そのサポートをする役目として造られました。
オルガンは、ギリシャ語のオルガノンに由来し、
この言葉は、道具、器具、楽器などを意味する。
聖書(バイブル)が「書物の中の書物」(ビブリア)という名を与えられたように、
礼拝式を遂行するよく知られた楽器(オルガン)は「楽器の中の楽器」(オルガナ)の名を与えられた。
音楽学者 フーゴー・リーマン
オルガンは、パイプ一つ一つが集合して、音がなっています。
元々は、一人の演奏者によって、複数の音を同時に出す、という考え方から生まれたようです。
パイプ一つ一つが、笛なのです。
小学校の時に習った、リコーダーが、何本も集まっていると考えると、分かりやすいと思います。
そして、1つの音色に付き56本の笛があります。
小さなオルガンでも、5つの音色が入ると、5×56本=280本のパイプが必要になります。
そのほか、ミクスチャー(音色の混合)などの、メカニックシステム(違う音色が同時に鳴る)を変えたり、複雑な音色を作るための機械が、オルガンの裏に隠されています。
「オルガヌム」は、ギリシャ語から派生したものらしく、
「すべて楽器というものを一般に表しているのであるが、多くのパイプからなる『ふいご』で風を送られてなる楽器に対して特に当てられる」
ピーター・ウィリアムズ
と、定義されたようなのですが、現代にいたっては、様子が違います。
発音体として一列、またはそれ以上のオルガンパイプ列を持っている鍵盤楽器であり、
パイプを支持している風箱の中に弁とアクション装置とを備え、演奏機構とは関係のない送風措置を持っているものです。
では、パイプ列を持っていないオルガンとは、何でしょうか。
ハルモニウム、いわゆるリードオルガンです。あの小学校のときにあった、足踏みオルガンです。
また、電子楽器、エレクトロニックオルガンなども、オルガンの仲間になります。
私が思うところは、「笛のような音」がなり、一人オーケストラができちゃうほどの、壮大な楽器であるのです。
昔は、笛を鳴らすのは、モーツアルトの魔笛に出て来る、パパゲーノみたいな人なのかしら?と、想像してしまいますが、実際には、神様を賛美する、という目的と、何かのイベントでこの笛の音がしたら、殿様がくるわ、みたいなサインだったのかもしれません。
2. 空気を送る
笛は、口から空気を送って音を鳴らします。
オルガンも、元々は、人の力で空気を送って音を鳴らしていました。
先日は、私の夫(オルガンビルダー)もその古いオルガンを修理してきました。
このオルガンにも、カルカント(空気を送る人)を呼ぶ、ベルがついていました。
この写真でイメージつくと思います。
昔は、空気を送る人(Kalkant)と呼ばれる人がいて、演奏者が弾く時に鍵盤の横についているベルを鳴らして、
「おーい、空気入れてくれー」と、合図をしていました。
この写真の上の部分に、ヤリのような鉄があるのが、分かりますか?
これが、そのベルがついていた所です。
演奏者は、このベルを鳴らしてから、このストップ(音色を出すスイッチ)を引き出して、演奏したのでしょうね。
空気を送る人(カルカント)にも、技術があるようで、かの有名なバッハも厳しい人だったので、カルカントを選んでいたようです。確かに、空気が少なく送られてきたり、ムラがあるような送風だと、音の迫力も欠けますよね。
3. はじめは「水オルガン」だった!
紀元前265年、エジプトに住む床屋さんが発明したのが、水力で空気を送られて鳴るオルガンだそうです。
当時、床屋さんといえど、科学技師や外科医に相当する仕事もこなす職人だったそうで、
その名は、クテシビウスという。
水力によって空気を送り、手で弁を開閉する装置(鍵盤)によって、パイプを鳴らす楽器を、発明したそうです。
これって、どこに鍵盤があるの??って思うのですが、空気を送る弁を開閉する部分が、のちの鍵盤になるのですね。
そういえば、英語でKeyboard(鍵盤)というのは、Key(カギ)でBoard(板)を、開けたり閉じたりする、という意味になりますね。
Keyは、演奏者の指だと、考えると、オルガニストは、その魔法の鍵を持っているようにも思えてきます。
そう考えていくと、魅力は深まりますね。
水オルガンの技術は、ギリシャ地方にも広まり、改良されて、水力を使用せずに、「ふいご」を使うオルガンに発展していったそうです。それが、この写真にあるような「ニューマチック」です。
これが、ギリシャの音楽と一緒に、ローマに伝えられて、のちに「教会旋法」としてギリシャ特有の音階になっていったそうです。
古代オルガンの写真を、ご紹介します。
なんの儀式か、分かりませんが、4人がかりでオルガンに空気を送り、2人で空気の弁を開けたり閉じたりしているのが、分かります。
こうした古代オルガンは、劇場や円形競技場で使用されていたようです。きっと、古代オリンピックでも使用されたのかもしれないですね。
まとめ
現代では、一般庶民にはなじみのない楽器、パイプオルガンですが、実際には、その音に魅了され、オルガンで人生変わっちゃった!(私も含む)という人は、数多くいます。
教会やコンサートホールにあるようなオルガンもあれば、一般家庭にあるオルガンもあります。
室内楽なんかで使われる小さなポジティフオルガンもあります。それは、次回で紹介していきます。
オルガンは空気が流れて、初めて音が鳴る楽器です。その空気は、私たちには見えませんが、音としてその存在を知ることができるのです。
神様も同じで、目には見えませんが、神様のみ業は、その自然界を見て認めざるを得ません。
私たちは、その世界に生きているのです。
次回もお楽しみに。